活動内容

書籍注文代行サービス
メールマガジンについて

フランス料理勉強会

古きをたずね、新しきを知る

【主催】 社団法人日本エスコフィエ協会
【協賛】 キスコフーズ株式会社 タカナシ販売株式会社
【協力】 辻調理師専門学校 ホテルグランヴィア大阪
大阪新阪急ホテル 帝国ホテル  日本スープ株式会社


2009年2月14日、大阪・あべの辻調理師専門学校にて、第1回目の研究発表講習会が行われた。これまで、オーギュスト・エスコフィエをはじめとする偉大なる先人の料理を協会の先輩方を通じて学び、抱いていた疑問の答えを模索してきた。今回、これらの内容を料理人だけでなく、料理に興味のある一般の方々も参加できる講習会という形で実施した。当日会場には、料理人や学生をはじめ約80名の参加者が集まり、熱い視線が終始壇上に注がれていた。


日本エスコフィエ協会
米津春日副会長
実行委員とサポートしてくれたスタッフ

2007年から現在まで過去2年間に実施した勉強会の中から、今回は次の3つのテーマを選び、「フランス料理勉強会」実行委員がデモンストレーションを行い、参加者はそれぞれの料理を試食した。

1.浅野和夫氏に学んだ日本のフランス料理の草創「マキシム・ド・パリ」の料理
2.フランス料理の伝道師サリー・ワイルの教えを受けた水口多喜男氏の「ソース・ベシャメル」
3.『Le Guide Culinaire』より白いラグーの基本「鶏のフリカッセと子牛のブランケット」


■フランス料理勉強会
日本エスコフィエ協会主催の「エスコフィエ・フランス料理コンクール」に出場した選手の多くは、コンクールを機にオーギュスト・エスコフィエの『ルLe ギードGuide キュリネールCulinaire』に触れたと言います。そこで改めて現代の料理が先人の技術に基づいていることを認識し、「自分達が今作っている料理のベースは何なのか」を学びたいという声がコンクール出場選手の有志数名からあがりました。そして、2007年4月、「フランス料理勉強会」が発足しました。発起人であるコンクール出場選手が自ら勉強会の実行委員となり現在に至っています。

■実行委員(五十音順)
柏木健一(ホテルグランヴィア大阪)  中田淑一(辻調理師専門学校)
久保康志(大阪新阪急ホテル)     能勢洋(帝国ホテル)
佐々田京(ホテルグランヴィア大阪)

日本エスコフィエ協会
井上静男副会長
日本エスコフィエ協会
水野邦昭理事
司会 実行委員 中田淑一
第1部 浅野和夫氏に学んだ日本のフランス料理の草創「マキシム・ド・パリ」の料理



2007年夏、記念すべき第一回目の勉強会で浅野和夫氏(現マキシム・ド・パリ顧問、日本エスコフィエ協会会長)より手ほどきを受けたマキシムの料理の中から『Sole Albert』を紹介した。講習会場に設営された4台のビデオカメラを通してマキシムがオープンした当時の銀座数寄屋橋の風景が映し出され、コックコートを着て実行委員と料理を作る浅野和夫氏の映像が流れた。当時のメニューを見せながら料理や内装の説明が行われ、続いて佐々田シェフによるデモンストレーションが始まり、浅野氏に教わったポイントを随時伝えながらソール・アルベールを仕上げた。骨付きで火を通したソールのしっとりとした食感、「重い」「濃い」とイメージとは違い、バターをたっぷりと使っているにもかかわらずレモンの酸味で引き締まったソースの味が、試食を通じて参加者にも伝わったようだ。参加者からは「ソール・アルベールのソースが想像より軽くて驚いた」という感想が多く寄せられた。この料理が当時のマキシムのメニューに1,400円と記されているということを司会者が伝えたが、最初は参加者もピンと来ない様子だった。当時のラーメンの値段は1杯80円だったと伝えるとあまりにも大きな値段格差に一瞬会場がざわついた。

【Soles Albert】
※材料・分量は日本エスコフィエ協会HP(http://www.escoffier.or.jp)に掲載しています。

今回の講習では、舌平目の下処理、火の通し方、その中でもソースのバターモンテの仕方に重点を置いて説明した。
特にサーバーを使っての盛り付け方はテクニックを要するものであった。
当時のサービスの仕方など開店当時の様子が受講者に届いたようである。

佐々田京(ホテルグランヴィア大阪)
【デクパージュについて】
ソールの縁側の部分と切り込みを入れておいた中骨を取り除き、身を崩さないように丁寧に皿に盛る。焼き上げたパン粉にかからないようにソースを全体に流す。残ったソースはソシエールにて供する。

  1. ソール(今回は黒ソールを使用)は水気をとり、両面の皮をはずし、頭をおとす。内臓部分は切らずに指でとりだす。特に内臓部分はしっかりと取り除く。水洗いはせずに紙でふき取る。
  2. ヒレの部分を取り除く。上部より約4cm部分の中骨に切り込みを入れておく。
    こうすると、サービスの時に骨がはずしやすくなる。
  3. バターを塗った皿にAの材料を混ぜ合わせたものを敷いておく。
  4. ソールの両面に塩,こしょうする。(身の厚いところは少し強めに)肉薄の裏面にブールクラリフィエ、パン粉をつける。この手順をもう一度度繰り返し、パン粉を2度付けすることで、きれいな焼き色がつく。
  5. ベルモットをパン粉にかからないように、ソールの半分位の高さまで注ぎ、200℃のオーブンで20分焼き上げる。今回はコンベクションオーブンを使用したので220℃に設定した。パン粉がしめらないうちに、素早くオーブンに入れる。
  6. 焼き色が不十分な場合は、サラマンドルで色をつける。

【ソース】

  1. 鍋にBの材料とベルモットを入れ、約1/5の量まで煮詰める。沸点の手前で、ポマード状のやわらかいバターでゆっくりモンテしていく。*沸点までいってしまうとバターの量がかなり多いので分離してしまう。
  2. 1.をモスリンで漉し、味をととのえる。モスリンで漉すと細かく切った香草などが入らず、滑らかなソースになる。
    *モスリン(仏語: mousseline)とは羊毛などの単糸で平織りした薄地の織物。
  3. 小巻海老は塩のきいたお湯でボイルし、1cmの長さに切りそろえ、白ワインであたため、2.と合わせる。最後にレモン汁を加える。レモン汁の量はかなり多いが、程よく味がひきしまる。

第2部 フランス料理の伝道師サリー・ワイルの教えを受けた水口多喜男氏のソースベシャメル

2007年秋、水口多喜男氏(日本エスコフィエ協会相談役)に講師をお願いして行った勉強会の中で、最も印象深かったソース・ベシャメルを紹介した。
今ではあまり作られなくなったが、何度も作るうちに、このソースがとても奥が深いソースであることを実感していた。同じ材料、分量で作っても作る人によって滑らかさ、つや、舌触りなど、仕上がりに差が出てくる。水口氏から教えられたのは、バターをブール・クラリフィエにして使うことだ。今回、比較しやすいように、3パターン(A,B,C)のソース・ベシャメルを作り、参加者に試食してもらった。香り、味、舌触りの違いは想像以上で、特にブール・クラリフィエで作ったソース・ベシャメルに感動したという声が多くの参加者から寄せられた。料理によって、これらのソース・ベシャメルの使い分けをしたり、それぞれをブレンドしたり、香味野菜を加えるなどすれば、また新たな発見ができそうだ。

久保康志(大阪新阪急ホテル)

3パターン/材料

  1. 澄ましバター、強力粉、牛乳、ローリエ、塩
  2. バター、強力粉、牛乳、ローリエ、塩
  3. バター、薄力粉、牛乳、ローリエ、塩



【Sauce Béchamel】
※材料・分量は日本エスコフィエ協会HP(http://www.escoffier.or.jp)に掲載しています。

  1. 鍋にバターを入れ焦がさないように注意して熱し、バターの水分をとばす。
    ※Aの澄ましバターを作るには、前日に温かい場所でゆっくり溶かしておき、冷蔵庫に入れ、上澄みの油脂分を固めて取り出し、水分を拭き取ってから使用する。
  2. 振るった小麦粉を入れ、よく混ぜ合わせる。小麦粉を入れたら弱火にし、ダマにならないように注意する。途中、焦げないように様子を見ながら数回混ぜる。
    *この時点でBとCの濃度に明らかな違いが出てくる。Bはある程度重さがあるのに対し、Cはサラッとしている状態。
  3. 2.のルーを約40℃まで下げ、別鍋で牛乳を60℃〜70℃まで温める。(牛乳は、表面にたんぱく質が凝固しないようにスパテュールで混ぜながら温度を上げる。)牛乳を3回〜4回に分け、ダマにならないようしっかり混ぜる。中火で空気を含ませながら良く混ぜ合わせる(vanner)。
    *この時のルーと牛乳の温度差がダマを作らないポイントだと水口氏に教えられた。目安はルーが40℃、牛乳が60℃。
  4. 牛乳が全て混ぜ合わさり、軽く沸いたら火を弱め、ローリエ、塩を加えて混ぜ合わせ、蓋をして煮込む。*ホテルなどで大量に作る場合は、鍋に蓋をして120℃〜130℃のコンベクションオーブンに30〜40分入れることもある。
    *ローリエの代わりに、小玉葱に丁子を刺したものを加えることもある。
  5. 粉っぽさが取れ、ソースにつやが出てきたらモスリンで絞り漉す。


    *漉す時は、モスリンの手元にタオルなどを巻き込んで、力を入れやすくし、2人で息を合わせ引きながら絞っていく。
  6. ボールに入れたソースの表面が固まらないようにバターを塗り、乾燥を防ぐ。
第3部「Le GuideCulinaire」より白いラグーの基本、「鶏のフリカッセと子牛のブランケット」

担当:柏木健一(ホテルグランヴィア大阪) 能勢洋(帝国ホテル)


2008年夏〜秋にかけてホテルグランヴィア大阪、帝国ホテルの協力を得て「Fricassée de Poulet à l’ancienne」 の料理検証を行った。1回目は、「Le Guide Culinaire」と「Travaux Pratiques de Cuisine※」のルセットをもとに調理したところ、共に比較的重量感のある料理になったが、仕上げにレモン汁とガルニテュールを加えることで全体の味が引き締まり、生クリームやバターの重みを感じなかった。ただ、ブレス鶏にもう少しゆっくりと時間をかけて火入れすればもっと旨みを引き出せたのではないか、という課題が残った。そこで、2か月後に再度検証を試みた。今度は「Le Guide Culinaire」のルセットでブレス鶏とブロイラー、そして国産地鶏を使う帝国ホテル伝統のルセットの3パターンを調理、検証してみた。鶏をじっくりと焼き、鶏の質によって煮込み時間を変えることで、旨みが十分に引き出せたと思う。また、最近あまり行われなくなった卵黄でつなぐ方法は、この料理を重たくはないがコクのある美味しいものにしている。
今回は、同じく白いラグーの基本というくくりで「Blanquette de veau à l’ancienne」と比較しながら紹介した。
デモンストレーションの最後に、フリカッセとブランケットの現代版として、それぞれ柏木シェフと能勢シェフが「Fricassée de Poulet à la moderne」「Blanquette de veau à la moderne」を提案した。
※「Travaux Pratiques de Cuisine」(1984年刊行)はフランスの国家資格である「CAP」(=Certificat d'Aptitude Professionnelle:職業適性証書)を取得するための教科書の一つ。

日本エスコフィエ協会 井上静男副会長
日本エスコフィエ協会 水野邦昭理事
柏木健一(ホテルグランヴィア大阪)
能勢洋(帝国ホテル)

【Fricassée de Poulet à l’ancienne】
※材料・分量は日本エスコフィエ協会HP(http://www.escoffier.or.jp/contents/02active/02meeting081029.html)に掲載しています。

  1. 家禽類の下処理を行い、骨付きの4つ落としにする。
    *煮込んでいる間に肉が縮むのを防ぐため骨をつけておく。
  2. 1.に塩、こしょうする。
    少量のバターを鍋に溶かし、皮面を下にしてゆっくり焼く(raidir)。
    *強火でソテーするのではなく、じんわりと旨みを濃縮するように火を通すので、その結果しっかりと焼き色がつく。白いソースなので、焼き色をあまりつけないことにとらわれがちだが、『Le Guide Culinaire』には、肉に焼き色をつけるなとは書かれていない。
  3. 2.を取り出し、鍋に残った余分な脂を拭き取り、バターを溶かし、小麦粉を加え、焦がさないように炒める。
  4. つけ合わせの小玉葱、シャンピニョンをfond blanc de volailleとバターでそれぞれ火を入れる。
  5. 3.の鍋にfond blanc de volailleを加え, 骨を外した鶏肉を戻し、蓋をして一度沸かしてアクを取り、bouquet garnisを入れて柔らかくなるまで煮込む。
    *2回の検証で、ブロイラーは約20分間、ブレス鶏の場合はその2倍の40分間煮込むと、肉、ソースともに美味しく仕上がることがわかった。
    *小玉葱とシャンピニョンは時間差で加え、火通りをみて取り出す。
  6. つけ合わせを取り出し卵黄を少しづつ加え、好みの濃度になれば、塩、こしょう、少量のレモン汁、シャンピニョンの煮汁を少量加え味と濃度を調えバターモンテする。
  7. 場合によっては、漉したソースの中に鶏、小玉葱、シャンピニョンを鍋に戻し、シズレしたシブレットを加えソースと絡めプラトーに盛り込む。仕上げにフルーロンを飾って供する。

【Blanquette de veau à l’ancienne】

  1. 肉を1片40gの塊に切る。
  2. 冷たいブイヨンに香味野菜と一緒に,瞭を入れ、ブランシール(blanchir)する。
    *白いソースの場合、血液や不純物によってソースが黒っぽくなるのを防ぐ。
    *肉をブランシールする時は、肉が瞬時にしまってしまうため、沸かした液体ではなく冷たい液体に入れる。
  3. 沸騰したら火を弱め、丁寧にアクをとりながら、6時間位ゆっくりと加熱する(mijoter)。
    *沸かしすぎると、液体の対流によって脂分が出てしまい、クリアな液体にならない。
  4. 肉が柔らかくなったら、取り出して保温しておく。煮汁はシノワで漉す。
  5. バターと小麦粉でルー・ブランを作り、そこにフォン・ブランを混ぜながら入れていく。
    *ルーをフォンに入れるとダマになるので、必ずル−をフォンで溶きのばす。
  6. 生クリームを加えてしばらく煮て、火からはずす。
  7. 再び弱火にかけて、卵黄を混ぜながら加えてつなぎ(lier)、塩、こしょう、ナツメグで味を整える。
    *卵黄が分離しないよう、火加減に注意する。
  8. 肉、別に煮ておいたオニオンとシャンピニョン、ソースを合わせ、温めて全体をなじませる。



【Fricassée と Blanquette の相違点】

  Fricassée Blanquette
レディール(raidir)する
※低温でゆっくり表面を焼き固める
ブランシール(blanchir)する
濃度のあるルーの中で煮込む フォンで煮込む
付け合せ
(オニオン、シャンピニョン)
肉と一緒に煮る 肉とは別にそれぞれ煮る
ソース 濃い 比較的サラッとしている



【Fricassée de Poulet à la 】

柏木シェフのコメント:
鶏肉を部位別に分けて調理し、それぞれの部位の味が 
活かされるような2種のフリカッセにアレンジした。

★アレンジのポイント
Supréme:フリカッセのベースのソースと共に低温真空調理。キュイソンにレモン風味のオランデーズを加える。ソースをナッペし、プーレのジュを少量添える。
プティポワのジュレ・ショーとパセリ風味のタピオカを添え、ソフトな火入れとフレッシュな香りの料理に。 
Cuisse:旨味の濃い腿肉をトランペット茸とトリュフを香らせた、ダークな色調のフリカッセにアレンジ。



【Blanquette de veau à la moderne】

能勢シェフのコメント:
本来のブランケットを、温製であるがショー・フロワに見立てて自分流にアレンジした。

★アレンジのポイント
  • フォンで煮る⇒フォン、ミルポワと一緒に真空調理。
  • 小玉葱とマッシュルームが付け合せ⇒キャラメリゼした小玉葱、マッシュルームの代わりにトリュフを使用。
  • ヴルーテと卵黄でリエ⇒ヴルーテの代わりに葛、卵黄の代わりにウフ・ポシェを用いた。
  • 仕上げのレモン汁、パセリ⇒柚子、パセリのジュレ・ショー。

●参加者の声
基本の大切さを再認識した。
ソール・アルベールのソースが想像以上に軽くて驚いた。
香り、味、食感が全く違うソース・ベシャメルが衝撃的だった。
3種のソース・ベシャメルをそれぞれに合う料理に使ってみたい。
見るだけでなく、味わうことでそれぞれの違いがよくわかった。
フリカッセの肉を白く仕上げることにこだわらない点が興味深い。
フリカッセとブランケットを比べて見せる方法が面白い。
驚きや発見があり、圧倒されて時間が過ぎるのが早かった。
「Le Guide Culinaire」の料理をもっと紹介してほしい。

ライン