フランス料理の発展・普及を目指す活動

フランス料理の発展・普及のため、料理講習会や貴重な料理書・資料の収集保存を始め、様々な活動を行っています。

2023年度 一般社団法人 日本エスコフィエ協会
ディシプル章授与式・総会・晩餐会

議案審議事項

坂本理事
坂本理事
伊藤理事
伊藤理事
【第1号議案】
役員構成

議長指名・承認を受けた坂本 理事が定款第17条第1項により総会成立を報告した。

坂本理事
坂本理事
【第2号議案】
2022年度事業報告

「2022年度事業報告書」をもとに説明、その是非を諮り、満場承認可決した。

能勢事務局長
能勢事務局長
【第3号議案】
2022年度収支報告等

財務担当の伊藤理事より議案書「2022年度収支報告書」をもとに説明、続いて吉田監事より議案書「監査報告書」をもとに2022年度の会計および業務の監査を報告、両件ともその是非を諮り、満場承認可決した。

伊藤理事
伊藤理事
吉田監事
吉田監事
【第4号議案】
2023年度事業計画書

議案書「2023年度事業計画書」をもとに説明、その可否を諮り、満場承認可決した。

【第5号議案】
2023年度収支予算案

議案書「2023年度収支予算案」をもとに説明、その可否諮り、満場承認可決した。

各議案書の詳細は下記よりダウンロードしてください

能勢事務局長
能勢事務局長
吉田監事
吉田監事
古澤氏講演全文クリックしてプルダウンしてください

1.料理とカクテル その共通点
最初に「料理とカクテルの共通点」というお話をさせていただきます。皆様、その辺りはよくご存知かと思いますが料理は様々な食材を皆様の手で合わせながら、全く別のものを創り出していきます。我々は数あるお酒の中から選んだお酒どうしを合わせて別の形を作っていく。その「ものを作る」また、「人の口に入るもの作る」という点はとても共通しています。
料理はどなたが作っても同じ味が出るかといえばおそらく違うと思います。我々バーテンダーもそうで、同じお酒を同じ分量だけ量って、同じように作っても全くもって別のものが出来上がってしまう。不思議ですが、そういうところも共通すると思います。
料理とカクテルの一番の共通点はやはり伝統、クラシックなものから、新しいものへ、どんどん時代とともに変化させていくあたりは非常に似ていると思います。カクテルの歴史は200年ちょっとですが、マティーニ、マンハッタンなど皆様がよくご存じの伝統的なカクテルも未だに人気です。同時にそれをアレンジしてコスモポリタン・マティーニ、エスプレッソ・マティーニなどの新しいカクテルが次々作られています。古いものを大事にしながら新しいものが生まれているという点でも、料理と共通点があると思います。

2.BARとは
続きましてバーとはどんなところなのかという話をさせていただきたいと思います。広くは酒場という意味で認識されますが、リーズナブルなショットバー、ゲームバー、スポーツバー、そしてカウンターで女性が接待してくれるスナック、高級店としてはクラブとかラウンジなどがあります。オーセンティックバーとはいわゆるバーテンダー、お酒の専門家がいて、カクテルを作る本格的なお店です。
「厚生労働省による飲食業の業態分類」において、以前は我々が務めているオーセンティックバーというカテゴリは無くて、緊急事態宣言の際にはお酒が出せないバーやナイトクラブと同じカテゴリにオーセンティックバーが入っていました。そこで協会として別の枠、お酒を出すことができるいわゆる酒場、ビアホール、居酒屋と同じところに入れてくれと陳情しました。それが認められましたので既にカテゴリは変わっていると思います。
いわゆる酒場でお世話する人のことをバーテンダーといいます。昔はよく「バーテン」と呼ばれましたが、最近はちゃんと「バーテンダーと呼んでくださいね」といろいろな場所でお話しております。エスコフィエ協会の皆様が料理人の方たちの地位を向上させるためにご尽力されているように、我々も、「バーテンダー」という言葉をまずしっかりと覚えていただこうと一般の方にご案内しております。

3.カクテルの歴史
カクテルとは広い意味で「お酒に何か足したもの」を指します。焼酎をソーダで割ったチューハイも実は立派なカクテルです。古代エジプトの頃からカクテルといえる飲み物は存在しましたが、実際にカクテルという言葉が生まれたのは1806年のお話です。あるニューヨークの週刊新聞の5月13日付記事で「カクテルとは何か」という読者からの問い合わせに対し「様々な蒸留酒、砂糖、水、ビターズでできた、俗に言うビタースウィートをカクテルという」と書かれたのが、カクテルという言葉が一般的な文章の中に出てきた最初です。この1806年5月13日が「カクテルの日」に制定され、各地でイベントなどを開催しています。

4.世界のカクテルトレンド
カクテルには大きく分けてショートカクテルとロングカクテルがあります。ショートカクテルというのはカクテルグラスで供され、仕上がった状態では氷が入っていません。ロングカクテルは中に氷が入っているものが多く、フローズンやホットもあります。
カクテルの作り方を4つご紹介します。グラスに直接氷や水、お酒を入れて作るカクテルを「ビルド」といいます。ビルディングのビルドで、下から材料を積み重ねていって作る一番基本的な作り方です。
次に「ステア」。これは大きなミキシンググラスの中に材料と氷を入れてくるくるとバースプーンでかき混ぜて作ります。これは混ざりやすい材料どうしを合わせるとき、ベースの素材を際立たせたいときに使う技法です。
皆様よくご存知の「シェイク」は混ざりにくいものを混ぜる時、急激に温度を下げて、空気を混ぜてまろやかに仕上げたいときの技法です。
4つ目の「ブレンド」はミキサーを使います。クラッシュアイスと材料を入れたフローズンスタイルやフルーツを溶かしてなめらかに仕上げたいときの方法です。
道具はそれぞれポイントに合わせて使い分けます。例えばミキシンググラスやシェイカー、特にシェイカーは、使う材料で形を変えます。振り方や中に入れる氷のサイズや順番も変え、その素材をしっかり活かしてあげるようにします。
カクテルのトレンドを紹介したいと思います。
ひとつ目は「シグネチャー」。これは料理の世界でもあると思いますがスペシャリテですね。そのお店に行ってその人のこれを飲みたいというような、これを「シグネチャーカクテル」といいます。
次に「サステナビリティ」があり、これは日本では昔から行われています。最近ではシャンパンを開けた残りはシロップにしておいてシャンパンカクテルに入れたり香り付けに使ったりと、細かいことですが無駄をなくすような活動をしております。

ノンアルコールのカクテルもトレンドでございます。コロナ禍でお酒をお出しできない時期にクオリティが上がったジャンルです。ノンアルコールでもお酒のようにおいしいカクテルを飲んでみたい、ということで流行りました。
ノンアルコールのお酒を使わないカクテルをモクテルと呼んでいます。モクはMOCKと書きますが「疑似」「偽の」という意味です。カクテルの偽ものということで世界共通の言葉となり、日本でも使われます。このモクテル専門のバーが東京、京都、大阪などでオープンしており、需要が広がっていると思います。

5.料理とカクテルのペアリング
最後に、料理とカクテルのペアリングについてご紹介させてください。皆様がご自身の料理と飲み物をぺアリングする場合、どんなアプローチで料理に添わせているでしょうか。例えば、料理の味とか香り、食べるとき、食べる前、アフターテイストなどの香りに合わせていくやり方。あとは、使用する素材、産地、素材がもともと持っている特徴、そんなところにアプローチをかけていくでしょうか。

それ以外では、料理の色合い、テクスチャー、食感などから合わせるお酒を選ばれているのではないかと思います。もっと言えば、料理のストーリーに寄り添うように合わせたらちょっと遊び心があって面白いと思います。新型コロナ禍の最中、太田総料理長からの依頼で考案したコース料理にあわせるノンアルコールの飲み物をご紹介します。ルセットを拝見し、コンセプトや使われるスパイスに合わせて工夫しました。
前菜の「オマールとキャヴィアのピラミッド菜園風」にはオマールと相性の良いエストラゴンをあしらったジントニックのようなボタニカルなハイボール「ジャルダンハイボール」を、コハク酸を含む帆立貝、グアニル酸を含む椎茸などうま味成分の多い食材が使われた「帆立貝のポワレとジャンボ椎茸のタルト」には、旨味成分の塊のドリンクメニューで対応しようとトマトと昆布を使った「トマティーニ」を作りました。
魚料理の「アコウのポワレとグリーンアスパラガスのパネ 軽いオランデーズソース」にはサステナブルなコンセプトとしてオレンジの外皮も中のジュも全て使い、オランデーズソースに使われなかった卵白も使用し、ふわっとしたテクスチャーの「サステナブル・ムード」を合わせました。
「黒毛和牛フィレとインカのめざめ 赤ワインヴィネガーソース」にはノンアルコールワインに欠けているコクと香りを補うために柘榴のシュラブとスパイスを加えました。
デザートの「マンゴーのタルトタタン ココナッツのシャーベット」には当ホテルのバーテンダー池上裕子が昨年の競技会で最優秀賞を受賞した「I&I(アヤナイ)」をアレンジしたモクテルを合わせました。
この中には素材、香り、テクスチャーなどいろいろなアプローチがありました。このようにバーテンダーも、料理に合わせて様々なことができるので、ぜひ機会があれば声をお掛けください。個人のお店でバーテンダーがいないという場合でもバーテンダーが常駐するホテルなどとコラボレーションをお考えいただければと思います。
今の世界的なカクテル競技会で戦おうと思いますと調理技術、パティシエの方のテクニック、バリスタの皆様の知識、これらが不可欠になっております。工夫し勉強しながらチャレンジし頑張っている若いバーテンダーたちにはぜひ皆様のお力をお貸しいただきと思います。現在はインバウンド観光のお客様が本当に増えています。そうしたお客様が国に帰ったとき「また日本に行きたい」「日本の料理が素晴らしかった」「日本のカクテルが素晴らしかった」と語ってもらえるように頑張ろうと若いスタッフと話をしております。
思いを巡らす想像力と、そこから何かを創造する創造力を大切にし、プロフェッショナルとしてプライドを持って頑張って行きたいと思います。またいろいろなところでお会いすると思いますけれども、ぜひお声をおかけいただいて一緒にお酒が飲めたらと思います。
楽しんでいただけたら幸いです。ありがとうございました。

古澤 孝之氏 プロフィール

リーガロイヤルホテル マスターバーテンダー
(一社)日本ホテルバーメンズ協会 副会長
HBA認定マスターバーテンダー

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