
日本エスコフィエ協会の総会晩餐会が6月6日(水)午後4時20分より、ホテルオークラ東京「曙の間」にて、会員420名の出席のもと開催されました。23年度の事業・収支報告をはじめ、24年度の事業・収支計画案や一般社団法人移行申請時の定款変更等の議案は滞りなく承認されました。また、講演会ではル・クラブ・プロスペール・モンタニエ日本支部会長でジャーナリストの磯村尚徳氏をお招きし、「日本におけるフランス料理の光と影」をテーマにご講演いただきました。

議案審議事項

浅野和夫会長による開会宣言に続き、福田順彦理事が総会議長として選任されました。現在の正会員数1,782名、本日の出席者数420名、書面表決者834名、委任状提出者282名、議決参加する会員は合わせて1,536名となり、定款第17条により総会は正式に成立することが確認されました。議長より議事録署名人として、浅野会長、田中副会長が指名され賛成多数で承認されました。

【第1号議案】 平成23年度事業報告
◆事業報告
柘植事務局長より、平成23年4月1日から平成24年3月31日までの事業実施の概略および議案書に基づく各事業の活動状況が報告された。
出版は、「エスコフィエの技 現代の術」の販売を通じて若手料理人の育成を目指している。同時にエスコフィエの料理技術の保存および技術向上も目的とする。会報はエスコフィエ通信の定期発行(年4回4、7、10、1月)を通して会員および一般に広くフランス料理に関する情報と協会の活動内容を伝えている。5月に協会創立40周年記念号を特別に発行。被災地支援活動も積極的に取り上げた。広報はホームページにフランス料理に関する情報および協会活動を紹介。特に被災地支援活動について内外の活動を速報性を心がけて掲載した。講習会・講演会は東日本大震災の影響を考慮して開催を見送った。料理フランス語通信教育は「料理フランス語通信講座」(日仏料理協会との共催)を実施。国際交流は海外のエスコフィエ協会と交流。平成23年7月にフランスのパリ・イル・ド・フランス地方の会員より被災地支援のためにと5,000ユーロの寄付を受ける。ディシプル・エスコフィエとエスコフィエ財団への寄付は東日本大震災により本年度は免除された。アヴィニョンの世界連盟総会に、フランス在住の並木勝人氏が会長代理で出席。フランス料理勉強会は第2回コンクール決勝課題の検証。被災地支援は野菜ジュースを宮城県南三陸町に12,000本、山元町に8,400本、マドレーヌ500人分を南三陸町の志津川小学校児童に届けた。「母と子のキャンプ」調理指導は計3回実施。社会福祉食事会は計2回開催した。親睦事業は今年度入会者60名の受付と会員証(ディプロム、エンブレム)などの送付。団体賛助会員である調理師学校の成績優秀生徒1名に「エスコフィエ協会優秀奨励賞」のディプロムを授与。昨年度は27校の生徒に授与した。ディシプル資格昇格者147名にディプロムとエシャルプを送付。他

【第2号議案】 平成23年度収支報告、平成23年度監査報告
◆収支報告
田中副会長より、平成23年度の収支報告が行なわれた。受取入会金、受託事業の経常収益合計は45,487,508円。支出として公益事業、受託事業、管理費の経常費用合計が41,807,716円。黒字分はビル修繕費用引当金、コンクール費用引当金とする。
◆監査報告
大河原監事より、会計帳簿、関係書類の閲覧、理事会での報告の聴取など監査方法の概要が説明され、吉田監事と二人で必要と思われる監査手続きを用いて業務執行の妥当性を検証した結果、当協会の収支の状況、財政状況は正しく示され、会計および業務は適正に執行されたと報告された。
【第3号議案】平成24年度事業計画案
柘植事務局長より、第6回料理コンクール開催、被災地支援活動の継続、社会福祉食事会を例年の2回から今年度は1回とすること等、平成24年4月から平成25年3月までの事業計画案が提示された。
【第4号議案】平成24年度予算案
田中副会長より、平成24年度予算案が提示された。収入減を考慮し、労務費を大幅に削減する等の緊縮財成案を作成したが、料理コンクールなど料理人の育成に関わる事業には重点を置く予算とした。

【第5号議案】一般社団法人移行時の定款案 大庭筆頭副会長
大庭筆頭副会長より、一般社団法人移行に伴う定款修正について、内閣府の指導に従い修正した定款案をもって設立申請し、認可を受けたことを報告。新定款が提示された。
【第6号議案】一般社団法人移行時の役員の変更 福田議長
前回総会で承認された一般社団法人移行認可時の役員名簿から古川理事の退任を承認。理事24名、監事2名の体制で今後は運営される。
【第7号議案】一般社団法人の公益目的財産の確定及び公益目的支出計画 福田議長
平成24年3月31日現在の正味財産額をもとに公益目的財産額を97,543,432円と確定した。また、前回総会で承認された公益目的支出計画(5年計画)をもって移行申請をしたが、協会の財務状況の変化により、6年計画に変更し、認可を受けた。
以上各議案は賛成多数をもってすべて承認された。

各議案書の詳細は下記よりダウンロードしてください
講演会 磯村尚徳氏(ル・クラブ・プロスペール・モンタニエ日本支部長)(要旨)


「日本エスコフィエ協会が発足した頃は大阪万博などもあり、日本が世界第2位の経済大国となった時代でした。日本におけるフランス料理も右肩上がりの成長を続けてきました。それを支えたのはオークラの小野正吉氏、帝国ホテルの村上信夫氏やその後継者の方たち、レイモン・オリヴィエ氏、ジョエル・ロブション氏など助言や指導をしてくれたフランス人シェフ、多くの門下生を育て、日本においてフランス料理に市民権を与えた辻 静雄氏などの多くの先人たちの尽力です。
一方で、心配されるのは若い人の間にはフランス料理は高額で、堅苦しいといった考えがあることでしょう。これはレストランにも責任があります。バブル期にフランス料理の価格が上がってしまい、それが尾を引いているようです。お金にあかして贅沢をしたいためにフランス料理を食べに来る人ばかりがお客様ではありません。辻 静雄氏が以前にもおっしゃっていたように、なけなしのお金をはたいて自前で食べればこそのフランス料理ではないでしょうか。最近では中国が台頭し、ボルドーワインの60パーセントは中国に輸出され、中国人の特に好きな銘柄である82年のシャトー・ラフィット・ロートシルトは香港で6,000ユーロ、約50万円にもなりました。これも良いこととは思えません。
フランス料理は作る人、賞味する人、サーヴする人の総合芸術。作る方は皆さんのお力によって世界的に高い水準にあり、サーヴィスについては日本には茶道などの伝統があります。今は食べる側の姿勢が問われる時代だと考えます。フランス料理の料理人は一生の仕事として素晴らしいものです。私も緊張感を持って皆様の料理を味あわせていただきたいと思います」と数多くの料理人の方たちとのエピソードを交えながら講演されました。