2007年8月14日(火) メゾン・オノ
実行委員: | 中田淑一(辻調理師専門学校) 久保康志(大阪新阪急ホテル) 能勢洋(帝国ホテル) 佐々田京(ホテルグランヴィア大阪) 歌田年一 |
1960年代、フランスパリの「マキシム」では数々の伝説料理やスペシャリテが生まれた。その伝統ある料理を様々な条件を克服し日本に持ち込んだ浅野和夫氏。
7月10日の浅野和夫氏と実行委員のディスカッションの中で、再現料理は、 |
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- ドーバーソールは水気をとり、両面の皮をはずし頭をおとす。内臓部分は切らずに指で取り出す。
特に内臓部分はしっかりと取り除く、水洗いはせず紙でふき取る。
- ヒレの部分を取り除く。上部より約4cm部分の中骨に切り込みを入れておく。
中骨を取り除き、サービスの際に取り分けやすくするために切り込みをいれる。
- オーブン用のプレートにバターを塗り、Aの材料を混ぜ合わせたものを一面に散らしておく。
- 1のソールの両面に塩、こしょうし、肉薄の裏面にブール・クラリフィエ、パン粉を付ける。パン粉を上にして3のプレートに並べる。
焼き色にムラが出ないようにパン粉を付けたらすぐにオーブンに入れる。
- パン粉にかからないようにプレートの淵からベルモット250mlを注ぎ、200℃のオーブンで20分焼き上げる。
色付きが不十分だったのでサラマンドルで色を付けるが、なかなかいい具合に仕上がらない。パン粉を付けてからの作業スピードがポイントである。
<Sauce>
- 鍋にBの材料とベルモット250mlを入れ、約1/5の量まで煮詰め、225gのやわらかいバターでゆっくりとモンテしていく。
分離しやすいので、できるだけ低い温度で乳化させていく。沸騰させないこと。
- 1を漉し、味をととのえる。
このときモスリンで漉すべきだったが、用意していなかったため、細かいシノワで漉した。
- 小巻海老は塩のきいたお湯でボイルし1cmの長さに切りそろえ、白ワインであたため2と合わせ、最後にレモン汁を加える。
レモン汁は数滴ではなく、1/2個分しっかり入れる。ソースに締まりが出てくる。
<Dressage>
- ソールに火が入ったら、縁側の部分と切り込みを入れておいた中骨を取り除き、プラッターに盛る。焼き上げたパン粉にかからないようにソースを全体に流す。
- 残ったソースはソシェールにて供する。
今回のソースの作り方は、事前に本で調べた方法と同様ではなかった。braisageは使用せず、料理が冷めてしまうといい状態で料理を提供できなくなるため、ソースを事前に作っておく工夫を当時はしていた。 しかし、このソースは分離しやすく非常にデリケートで、バターもたっぷり入る。 最後のレモン汁の量は想像以上であった。味を引き締め、グラス・ド・ビアンドを入れたせいかこくがあり、「濃い、重い」という感じはない。 このような味のソースを味わえたことは非常に勉強になった。 ソールは骨付きで火を通すという方法がやはり美味しく仕上がるということを痛感した。あのしっとりした触感は忘れられない。

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- プーラルドの手羽、首づる、フルシェットを取り、粗切りにしておく。
- 付け合せのミディトマトは湯むきする。
- タマネギは1.2cm幅、人参は1cm幅のミルポワを用意し、1とサラダ油30mlを混ぜ合わせ、オーブン用の鉄板中央に広げておく。
アバティとミルポワを混ぜ、鉄板に敷くことにより、その味がソースに生きてくる。フランス語のルセットにはアバと書かれているが、実際はアバティを用いていた。
- プーラルドの腹部に塩、こしょうし、トマトコンカッセ、タイム、ローリエを詰めブリデし、全体にしっかりと塩、こしょうする。
4を3の上に置き、プーラルドの表面にサラダ油25mlを塗り、200℃のオーブンで40〜50分焼き上げる。ロティする際に、塩、こしょうだけでなく、トマトを入れたのは意外だった。プーラルドの腹から出てきたジュがとても美味しく、ソースに十分使えるものだった。 - きゅうりは皮をむき、長さ3cmのカルチェに切り揃え、タネを取り面取りして、塩のきいた湯に軽く通し、冷水に落とし水気をよく取っておく。
- 4をオーブンから取り出し、網を敷いたバットにうつし、アルミホイルをかけて充分に休ませる。
<Sauce>
- 鉄板のミルポワはよく油を切り、別鍋に移し、鉄板に残ったうま味を白ワイン 200mlでデグラッセし、ミルポワの入った鍋に加える。
約5分間煮込み、フォン・ド・ヴォライユ・コルセ200ml、クリーム300mlを加え、さらに5分間弱火で煮詰めてパッセし、塩、こしょうで味を調える。
フォン・ド・ヴォライユは、濃い物が望ましい。
- 別鍋に、バター30gを入れ、軽く火を通したきゅうりをソテーし、パプリカを加え、よく混ぜ合わせる。 さらにクリーム400mlを注ぎ、塩、こしょうし、きゅうりが柔らかくなるまで約5分煮込む。1と2を混ぜ合わせ、味を調える。
パプリカは、きゅうり全体がオレンジ色に染まるくらいたっぷり使う。
<Dressage>
- プーラルドの糸を取り、プラッターに盛り、ミディトマトを周りに並べる。プーラルドの上から全体にソースを流し、トリュフを飾る。
日ごろ加熱することの少ないきゅうりを使った料理だが、こんなに香りと美味しさがマッチしたソースになるとはメンバーも予想していなかった。現在、作らなくなった理由を考えると、メンバー自身もその美味しさを知らなかったからではないかと思う。 トマトをプーラルドの中に詰めるというのは意外だった。プーラルドの焼き上がり具合を確認する際、プーラルドの腹から流れ出た肉汁はトマトと香草の香りがした。 その肉汁をソースに加えることで一層トマトの旨みがソースの仕上がりに深く影響しているように感じた。このような操作は今まで見たことがない。 当時のクリームソースは「濃い」のだろうと思っていたが口当たりがあっさりして、香味野菜の香ばしさ、甘さとプーラルドの旨みが凝縮した洗練されたソースに仕上がっていた。 生クリームの質が当時と現在とではかなり違いがあるという話を聞くと、当時の味とは少し違っているのかもしれないと思う。 生クリームの何が今と違っていたのであろうか。『当時の味』、非常に難しい課題である。

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- じゃがいもは皮を剥き、厚さ2oに切り揃え、流水にさらす。
当時は、前日にじゃがいもを切り、一晩水にさらしてでんぷんを取り除いていた。
- 1をふきんに並べ、充分に水気を切っておく。
- 2をボウルに移し、塩、こしょう、ブール・クラリフィエを加え、バターをなじませるようによく混ぜ合わせる。
- キャセロールに3をあまり重ならないように一層だけ並べる。
- 200℃で20分焼き上げる。
約10分後、浮いてくる余分なブール・クラリフィエをしっかりと取り除き、再度オーブンに入れる。ここで焼き色によっては温度を調整する。
じゃがいもの表面に焼き色を付け、ぱりっとした食感を残す。
『ポム・マキシム』という言葉を今までよく耳にしていた。しかし、作り方はまちまちで本来どのように作られていたのか興味があった。 シンプルな材料でじゃがいも本来の美味しさを引き出す料理だけにじゃがいもの良し悪しが影響すると思う。じゃがいもの厚さは2〜3mmで、一晩水にさらし、水分を取った後に少し乾かす。 後でバターが馴染みやすくするためであろう。肉・魚料理を問わず、様々な付け合わせに適している。たっぷりめに振った塩も食べるとそれを感じさせない。 ブール・クラリフィエを使うことでじゃがいもが香ばしくぱりっとした焼き上がりとなり、シンプルながらも長く愛されている料理だと感じた。 ふちはカリッと、重なっているところはしっとりと仕上がっていた。 |
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