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フランス料理勉強会

伝統と現代 エスコフィエの技とエスプリを学ぶ

第二回 水口多喜男氏

伝統と現代 エスコフィエの技とエスプリを学ぶ

2007年9月04日(火) メゾン・オノ

実行委員:中田淑一(辻調理師専門学校)
久保康志(大阪新阪急ホテル)
能勢洋(帝国ホテル)
佐々田京(ホテルグランヴィア大阪)
歌田年一
アドバイザー:浅野和夫(協会副会長)
柘植末利(協会理事)

第2回目の勉強会は、エスコフィエ協会相談役の水口多喜男氏に調理の基本技術、料理人としての心得についてお話を伺った。
水口氏は、1917年(大正6年)生まれ。15歳で料理の世界に入り、長い戦争体験を乗り越え、この道75年の経験をもつ大先輩である。 2007年10月に、自伝「料理一筋九十年」を出版された。

水口多喜男氏
ベシャメルソースについて

同じ材料、分量でソースを作っても、作る人によって出来上がりのなめらかさ、つや、舌触りや仕上がりに差が出る。バターによる違いもある。殆どのバターには、約10%の水分が含まれる。 先輩方が作っていた美味しいベシャメルを作るには、水分の少ないバターを選び、そのバターをブール・クラリフィエにして作ることを水口氏から教えていただいた。 私達はこれまで、ルーを作る際にブール・クラリフィエを使う方法は知らなかった。想像したことがなかった。水口氏はさまざまな文章の中でソース・ベシャメルについて取り上げている。 今では、バターと小麦粉という材料が基本になっているが、用途に応じた使い方を考え直すべきだと改めて感じた。

牛乳を温めるときは、沸騰させるのではなく70℃前後に温める。昔、ミルポワを入れて作っていたと記載している本もある。 ミルポワを入れることにより、野菜の水分や風味がプラスされるので、また違った感じのベシャメルソースに仕上がる。モスリンで漉し、野菜の甘さがプラスされたソースになる。 いつから今のようなスタイルになってしまったのであろうか。 いろいろな面でのコスト削減が理由の一つなのかもしれない。

ベシャメルソースについて

水口氏とのディスカッションの後に、実行委員でソース・ベシャメルを3種類作ってみることにした。

ベシャメルソースについて ベシャメルソースについて
1.ブール・クラリフィエ+強力粉 2.バター+強力粉 3.バター+薄力粉

この作業で、今まで知っていたようで知らなかったバター、小麦粉、ベシャメルの仕上がりの特徴を知ることができた。用途に応じた作り方を考えるようになる筈である。

ルーを作る時、小麦粉の使い方について深く考えたことがなかった。強力粉は、グルテンの量が多く、グルテンは熱に弱いので、“早く足が切れる”。 薄力粉は、いつまでも糊のように“足が切れない”、という知識があっても、同じ分量、同じ時間で実際に比べたことがなかったのでピンとこなかったのだ。小麦粉の「コシ」や「粘弾性」も大事ではあるが、粉の選択は仕上がりの用途に合わせないといけない。

AとBを比較すると、ルーを作る時点で、明らかに状態が異なり、仕上がりも違うことが分かった。詳しいソース・ベシャメルの内容は、別紙にて紹介する。

じゃがいもの細工について

水口氏が機内食に携わっていた当時、エールフランス航空のシェフから教わったものの一つ、Pommes frites en chaineを今回紹介していただき、実行委員が再現してみた。

フランス料理でも野菜の細工のようなものが出来れば、また違った演出もできるであろうということで教えていただいた。

下の写真は、水口氏が説明のために作ってくださった型紙。

じゃがいもの細工「作り方」
  1. 5oの厚さに切ったじゃがいもを30分塩水につけておく。
  2. N字形に交互に切り込みを入れる(※切り離さないように注意する。)

    じゃがいもの細工「作り方」

  3. ×××××の箇所をくりぬく。赤線に切り込みを入れる。

    じゃがいもの細工「作り方」

  4. 水分をよく取り、広げた状態で低温で揚げる。

    じゃがいもの細工「作り方」

じゃがいもの細工「作り方」

最後に、水口氏から料理人の後輩へのアドバイスとして「人生努力」という言葉を頂いた。また、多くの料理人が外国で修行し、日本のフランス料理が発展してきた反面、残念な面もあると指摘された。 例えば、フランス料理のメニューは、料理人が理解できても、お客様が理解できないものが多く、自己満足の競争になってきているのではないか。 「簡単明瞭」なメニュー表記と料理は、何処かに取り残されてしまったのであろうか。考え方は人それぞれだが、私達が今、本当に考え直さなくてはいけない課題である。

ディスカッションの後、大先輩に対する感謝の思いでいっぱいになったことを私達は決して忘れないだろう。大切なことを惜しみなく後輩に伝えてくださる大先輩がいるのだから、私達も先輩方の話をしっかり受け止め、それに応える努力しなければいけない。

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