1846年にオーギュスト・エスコフィエが生を受けてから170年目にあたる今年もエスコフィエの誕生日である10月28日に「エピキュロスの晩餐会」が世界同時開催されました。今年のテーマは「Cuisine populaire(大衆料理、食べなれている料理)」。各地の家庭料理に想を得たメニューで参加された各店からの報告です。
※料理名は各店のメニュー表記に従いました。
フランスを南北四つに分けて、各地の特徴ある料理を取り入れ、フランス旅行の気分を味わっていただければと考えました。一品ずつは量を控えて見た目も斬新なものにと工夫しました。エピキュロスの晩餐会はお客様にも覚えていただき、ある程度定着してきた印象です。サーヴィス担当がポトフをココットに入れて取り分けるパフォーマンスもでき、お客様にも楽しんでいただけたと思います。
フランス料理の王道でもある「パテアンクルート」は鴨肉、豚肩肉、ワインをベースにした昔ながらの一皿です。エイヒレは軟骨のコリコリ感と身の淡白な風味、焦がしバターとレモンの香り、ケッパーの酸味のバランスを大切に考えました。おかげさまで好評をいただき、エイヒレは11月のおすすめ料理として、「パテアンクルート」も単品料理として、今後もメニュー掲載予定です。エスコフィエのルセットや当時の「食」について改めて学ぶ機会になり、スタッフも自分も勉強になりました。
エスコフィエの生誕170年にふさわしいメニューをと考え、「パテ・ド・カンパーニュ」は茨城県塚原牧場の希少な梅山豚と白レバーを使用。「ソール・ムニエル」は粉をまぶさず上火焼きにした鳴門の舌平目をブール・ノワゼットソースと柑橘の香りと共にお楽しみいただきました。「コック・オー・ヴァン」は鹿児島黒サツマ鶏を使用し、エスコフィエがレシピを著述し、世に広まった「クレープ・シュゼット」をデザートとしました。
ガストロノミックなレストランにおける大衆料理・地方料理ということでメニューを考案しました。しかし、「カスレ」ひとつとっても日本人になじみが薄いために、地方料理なのか、ガストロノミックなのか理解されにくく、その点が少し残念でした。継続することで日本でのフランス料理への理解が深まることを期待したいと思います。
昨年同様、エピキュロスの晩餐会を楽しみにしていただいているお客様で満席となりました。この地の食材で普段お出ししている料理からコースを作りました。自家製の燻製を始め、鹿肉、鱸は静岡県産、次郎柿も地元の特産です。デザートは静岡産の抹茶を使用し、地元の果物を添えました。山荘の環境もご馳走のうちで、ここで味わうからこそのオーヴェルジュにふさわしい催しになったと思います。
今回のテーマに沿いオーギュスト・エスコフィエの故郷でもある、ヴィルヌーヴ・ルーベの南仏料理をメインにメニュー考案をいたしました。地産の尾張牛を使い Daube de Bœuf à la provençale を提供し、お客様にも大変喜ばれました。多くのお客様にこの催しを通してフランス料理に親しんでいただくために、今後も積極的に参加させていただきます。
1902年のガラディナーのメニューを参考にした「フカヒレとコンソメ パイ包み」は本来コンソメとツバメの巣のスープですが、今回はフカヒレで代用しパイ包みに。「鮟鱇のブイヤベース ルイユのラッケ」はエスコフィエの故郷の郷土料理・ブイヤベースを参考にし、メインはエスコフィエの最も代表的なメニューを基に和牛フィレ、フォワグラ、トリュフなど最高の食材で仕上げてエスコフィエらしい郷土料理メニューを目指しました。
ブルゴーニュの郷土料理エスカルゴのブールギニョンを現代風にアレンジしました。ふつうはエスカルゴを殻に入れますが、今回はエスカルゴ・バターとエスカルゴをオブラートで包んでベニエの生地をつけて揚げ、丸く仕上げました。口に入れるとサクサクの衣の中からエスカルゴバターがじわっと出てきます。お客さまにはサプライズのある料理としてお楽しみいただき、エピキュロスの晩餐会にも興味を持っていただけました。
より多くの方にお楽しみいただきたいと考え、13日にワイン会として、10月23日より1週間はカジュアルランチプレートで、エピキュロスの晩餐にちなんだメニューを提供しました。地元九州のテロワールを意識し、豊かな食材と季節の味覚を活かし、細部にもこだわった料理を目指しました。今後もより多くのお客様にこのような催しを知っていただく取組みを続けたいと考えています。