2007年10月24日(日) 於 新阪急ホテル・シィーファー厨房
担当: | 久保康志(新阪急ホテル) 中田淑一(大阪・あべの辻調理師専門学校) |
9月4日、「グランシェフに学ぶフランス料理勉強会」(於メゾン・オノ)において開催された第2回水口多喜男氏とのディスカッションの中で、古典的なソースの一つであるSauce Bechamelを学んだ。
現代の西洋料理では作られることが少なくなったこのソース、本当に奥が深い事を実感した。 強力粉や薄力粉を使う場合、また澄ましバター(ブール・クラリフィエ)を使う場合など、幾つか比較して作ると仕上がりの違いがよく分かる。 1964年、水口多喜男氏の指導を受けた柘植末利氏(協会理事/ザ・プリンスパークタワー東京・総料理長)より当時のルセットを頂戴し、3種類のSauce Bechamelをそれぞれを同じ条件で再現した。
- 1 kg de beurre
- 1.2 kg de farine
- 11L de lait
- 3 feuilles de laurier
- -sel
※今回は3種類(A・B・C)とも上記の分量の半量で行った。
※澄ましバターは、前日、バターを温かい場所でゆっくり溶かす。冷蔵庫に入れ、油脂分を固め、取り出し、水分を拭き取り使用する。
A | B | C |
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<ルー(Roux)の豆知識>
- ※小麦粉グルテンの比較
強力粉 11.7%→こしがきれやすい
薄力粉 8.0% →のり状になる - ※ Roux Blanc(白色)=ベシャメルソース
白いソースに仕上げなければならない為、バター、小麦粉を焦がさないように注意する。
- 鍋にバターを入れ熱する。(バターを焦がさないように注意する)
↓ ↓ ↓ - ふるった小麦粉を入れ、よく混ぜ合わせる。(小麦粉を入れたら、弱火にし、ダマにならないように合わせ、よく炒め、130℃のコンベクションオーブンに30分~40分入れる。(途中、焦げないように様子を見ながら数回混ぜる。)
↓ ↓ ↓ - 2のルーを約40℃まで下げ、別鍋で牛乳を60~70℃まで温め、(表面にたんぱく質が凝固しないようスパテュールで混ぜながら温度を上げる。)牛乳を3回~4回に分けて加え、ダマにならないようしっかり混ぜ、弱火で煮込んでいく。
↓ ↓ ↓ - 牛乳が全て混ざり、軽く沸いたら火を弱め、ローリエ、塩を加えて、混ぜ合わせ、乾かないように蓋をして120℃~130℃のコンベクションオーブンに90分入れる。
(ローリエの代わりに、小玉葱に丁字を刺したものを加えることもある)
↓ ↓ ↓ - 粉っぽさが取れ、ソースに艶が出てきたらモスリンで絞り漉す。
ボールに入れたソースの表面が固まらないようバターを塗り、乾燥を防ぐ。↓ ↓ ↓ 仕上がった状態
A B C
※写真で見る限りではあまり変化がないが、明らかに香り、口当たりに違いが出た。
- 澄ましバターを用いることで、従来のベシャメルソースとは違うまろやかさ、香り、そしてさわやかな生クリーム感も覚えるような上品で繊細なソースに仕上がった。
香味野菜を加えれば、また一段と香りと美味しさを持ったソースになりそうである。
作り方も小麦粉、澄ましバター、牛乳が混ざりやすく失敗が少ない。ベシャメルソースは重たいと固定観念を抱いていたが、このようなソースを今まで知らなかったのは残念だ。 - 口当たりにどっしりとした重厚感を覚える。全体的にコシが強く、ソースに弾力感が残る。 このベシャメルの特徴を料理で表現すると、野菜や甲殻類を混ぜ合わせた、クロケットのような調理法が適しているように感じた。 ルーの状態がそのまま口当たりに比例している。実に分かりやすい。
- 全体的にしっとり感と滑らかさが特徴である。足が切れやすくBに比べると口当たりが軽い仕上がりという感じがする。 ややAに近いソースとなるが、香りの面ではAに及ばない。 口当たりが柔らかい仕上がりのため、チーズを加えたり、卵黄でリエするなどアレンジしやすい。 グラタンや素材の上にかけてグラティネする料理に適しているように思える。
今後、このA、B、Cの特徴をよく理解して小麦粉の比率を変えて作ってみてはどうであろうか。Aは今まで味わったことのない香りや味に驚くほどだったが、コスト面では少し難しいかもしれない。しかし、本当に美味しいものが出来た。 現実的に考えられるものとして、Bの重量感とCのしっとりした滑らかな口当たりをブレンドし、自分なりの表現の仕方でソースを作り出すのも課題である。 今回、3パターンを比較したからこそ理解できたことが数多くあったと思う。これからのベシャメルの作り方が変わってくるはずである。
A.澄ましバター+強力粉 | B.バター+強力粉 | C.バター+薄力粉 |
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バターの水分等を除去した澄ましバターは、小麦粉を加え、炒めていく段階で香り高い風味がたちのぼり、サラッと感が生まれる。 強力粉なのにCのルーの状態に似ている。バターの上澄みだけを使い、乳漿(にゅうしょう)を使わなければ、ダマは出来にくい。 | ルーの段階でスパテュールに重みを感じる。弱火にするなどの配慮をしなければ、ダマになりやすい。全体にモソモソ感があって、炒めるのには火加減が重要になってくる。 | 薄力粉は、強力粉と違いバターに混ざりやすく、サラッと感が生じ、Aのルーとよく似た状態に仕上がる。非常に扱いやすい。 |
A.澄ましバター+強力粉 | B.バター+強力粉 | C.バター+薄力粉 |
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澄ましバターを用いることで、従来のベシャメルソースとは違うまろやかさ、香り、そしてさわやかな生クリーム感も覚えるような上品で繊細なソースに仕上がった。 玉葱や人参、シャンピニオンなどの野菜のソテーを加えれば、軽い美味しさを持ったソースになりそうである。作り方も簡単で、小麦粉、澄ましバター、牛乳が混ざりやすく失敗が少ない。 ベシャメルソースは重たいと固定観念を抱いていたが、見事に覆された。 | 口当たりにどっしりとした重厚感を覚える。全体的にコシが強く、ソースに弾力感が残る。 このベシャメルの特徴を料理で表現すると、野菜や甲殻類を混ぜ合わせた、クロケットのような調理法が適しているように感じた。 | 全体的にしっとり感と滑らかさが特徴である。足が切れやすく、Bに比べると口当たりが軽い仕上がりという感じがする。 ややAに近いソースとなるが、香りの面ではAとは別物である。また、口当たりが柔らかい仕上がりのためチーズを加えたり、卵黄でリエするなどアレンジしやすい。 グラタンや素材の上にかけてグラティネする料理に適しているように思える。 |
※この特徴をふまえて、仕上がりを想像して粉をブレンドしたりしてみるとまた違った料理となる。
