セルリアンタワー東急ホテル『ボールルーム』にて在日フランス大使代理ニコラ・ベルトレ氏、エスコフィエ協会国際連盟アジア・中国地区会長ロベール・フォンタナ氏、日頃協会がお世話になっている多くの方々をお招きし、総勢482名の大晩餐会が開催されました。今回初めての試みとして福田総料理長によるキッチンからの料理説明が会場2か所の大型スクリーンにリアルタイムで映し出され、参加者の興味を誘い、大いに盛り上がりました。
会長挨拶(要旨)
開催にあたり、まず浅野前会長に御礼を申し上げます。東日本大震災を経ての協会運営は東京電力のスポンサー撤退など財務的に大きな打撃を受け、並大抵のことではなかったと拝察します。 協会は「オーギュスト・エスコフィエの掲げた近代フランス料理の継承と現代における発展、人材育成、料理長による社会貢献」の3つの目的をかかげて進んで参ります。 これらを踏まえて、私は少しでもフランス料理業界をよくしたいと考えています。 消費税引き上げへの対策、食糧・農業・農村の発展を担う若い力の養成、少子高齢化の時代におけるフランス料理業界の後継者育成などに取り組まなくてはなりません。収益事業拡大も課題と考えております。 本日、ご臨席くださったフォンタナ アジア・中国会長と協力関係を結び、これからの時代の協会のあり方を考え、本日誕生した新しいディシプル会員の皆様にもディシプルの意義について真剣に受け止めていただきたいと思います。 現在、メゾン・オノ一階を改修し、小野初代会長、山本直文、辻静雄両永世名誉顧問を始め、フランス料理に魂を込めた諸先輩に敬意を表して資料館を整備しております。 今後の明るい未来を期待し、新会員とともに協会の進化を目指す所存です。
在日フランス大使代理 挨拶(要旨)
日本エスコフィエ協会晩餐会にお招きいただいたことは心からの喜びであり名誉です。クリスチャン・マセ大使は出席できないことを大変残念に思っております。 エスコフィエ協会はガストロノミの分野で日本とフランスをつなぐ役割を担い、かつ日本でもっとも多くの会員を有し、ダイナミックな活動をしていると伺っています。 このように多くの会員の皆様が集っていることがその証明ではないでしょうか。 四十数年前、日本でフランス料理が広がり始めた頃に開設された日本エスコフィエ協会は、まさにオーギュスト・エスコフィエのエスプリの元に伝統と革新の統合を成し遂げていくと確信しています。 かつてオーギュスト・エスコフィエがそうしたように若い世代を育成し、未来の食への挑戦を成し遂げていくことでしょう。会員の皆様におかれましては常に上質で健康、また安全な食を多くの人に提供する役割を担っています。 これは先日フランス大統領に同行して来日した農水大臣のメッセージでもあります。ガストロノミが完結するためには分かち合う楽しみ、食の喜びか必要です。 私はここで素晴らしいガストロノミをオーギュスト・エスコフィエの名の下に楽しみたいと思います。
エスコフィエ協会国際連盟アジア・中国地区会長 挨拶(要旨)
親愛なる日本エスコフィエ協会の皆様、本日はお話をする機会をいただきたいへん嬉しく、名誉に思っております。 なぜなら日本エスコフィエ協会は世界中のエスコフィエ協会のなかでも組織化に成功した先駆者だからです。 私が指揮をとっている香港のグローバル高級スーパーマーケット「シティースーパー」は50%が日本資本であり、働き手の50%が香港人、残りの50%が日本人とフランス人で構成されています。 多国籍の人々によって構成された組織は運営は簡単ではありませんが当社は成功しております。隣り合った国でも異なった方法論や基準を持っています。しかし、知識を伝えるためには同じ価値観の共有が必要です。 人や予算の不足で協力することができなくても、われわれは料理遺産という唯一の価値を守るため、世界エスコフィエ協会会員として意見を交換しなくてはなりません。コミュニケーションこそエスコフィエ協会が生かされる道です。 正当性、独立性、アイデンティティを守りながらともに活動することは可能でしょう。 互いに助け合ってイメージを高めていきましょう。
日本エスコフィエ協会 相談役 乾杯挨拶(要旨)
日本エスコフィエ協会の総会・晩餐会の開催、まことにおめでとうございます。今年は私の父辻静雄の生誕80周年記念にあたります。 辻静雄は1971年、38歳の時に協会設立に携わらせていだきました。40年以上の時を経て私がここに立たせていただくことに強いご縁を感じます。 わが国のフランス料理業界の発展は目覚しく、小野正吉永世名誉会長と諸先輩方のご尽力は大きかったことと拝察します。父は口癖のように熱いものは熱く、冷たいものは冷たくと言っていました。 全員お皿が揃うまで待つのではなく、最高の状態で皆様にお料理を楽しんでいただくということです。 シャンパンのように泡の出るものは泡が消えないうちにと付け加えさせていただき、乾杯へ移りたいと思います。
浅野名誉会長に記念品贈呈
乾杯に先立ち、壇上で大庭会長から浅野名誉会長へ記念品として旅行券が贈呈され、会場からは大きな拍手が送られました。続いて、辻相談役、新旧両会長の発声により晩餐会はスタート。
シャンパンはレジオン・ド・ヌール勲章を模したラベルデザインで、ふくよかな味わいが特徴のGHマム・コルドン・ルージュが用意されました。
閉会の辞 筆頭副会長
会員の皆様にはお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。日本エスコフィエ協会は純粋な料理人の集まりであり、フランス料理は食と美の世界遺産として認められているものです。 本日はセルリアンタワー東急ホテル、および東急グループのシェフ、スタッフの皆様のおかげを持ちまして、日本を代表するフランス料理人の集まりにふさわしい素晴らしい晩餐会となりました。 心よりお礼を申し上げるとともに、お集まりの皆様のますますのご発展をお祈りして私の挨拶とさせていただきます。
晩餐会メニュー
セルリアンタワー東急ホテル福田総料理長による料理の説明は、キッチンから会場2か所の大型スクリーンにリアルタイムで映し出され、水野理事が両サイドを結ぶ進行のサポート役を担当しました。 福田総料理長ならではの斬新で、工夫を凝らした料理に目を見張り、中でもエシャルプをイメージした魚料理には驚きの声。 3種類のパンは料理に合わせそのつど焼き上げるなど、エスコフィエのエスプリを生かした協会ならではの晩餐会となりました。

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①Œufs
蟹の身をたっぷり加えた卵のフランを耐熱の卵型を使ってウー・モレ(殻付半熟卵)に見立て、チューブ入りのオマールのビスクを絞るように流し込んでいただくアミューズ・ブーシュ。
mollets à ma façon
卵を使ったアミューズ・ブーシュ 
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②Pâté de campagne
猪肉をメインに作った現代風パテ・ド・カンパーニュにフォワグラのムースをモンブラン・ケーキ風に絞って飾り、中には濃く煮詰めたフランボワーズのピュレを忍び込ませ、切ったときに三位が一体となる独創的な一皿、料理の下には甘くないシュトレンを敷いた仕上げで。皿に描いたソースはクーリー・トリュフ。
et mousse de foie gras façon Mont-blanc
avec sa purée onctueuse de framboises aigres douces
昔ながらの技法で丹念に仕上げた野生の猪パテ ド カンパーニュにフォワグラのムースでモンブラン仕立て 甘酸っぱく凝縮した旨みとなめらかな木苺のピューレと共に 
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③Fruits de mer
フヌイユとリンゴのフルーティーなピュレの上にオマールのジュレ・コンソメを流し、ガルニテュール的に多種類の魚介や香草等で彩りよく飾った旬の逸品。
dans une délicate gelée recouverte
d'une douce crème de fenouil
魚介類のコンソメジュレ フルーティーなフヌイユのクレーム 
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④Bar
耐熱の深い器に、インカの目覚めとあめ色に炒めたリヨン風ポテト、モリーユ、金柑を入れ、鱸のフィレにパセリ・バターを塗って、パン粉とバターをノワゼット炒めた(ポロネーズ・ソース)を乗せ、蒸し焼きにしたもの。蓋にはクレープ、赤い紐をとって召し上がる演出も楽しめる。
à la boulangère en sauce polonaise beurre et persil,
pommes de terre lyonnaises et morilles
鱸のブーランジェール
リヨネーズポテト ポロネーズパセリ 網笠茸 
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⑤Veau de lait
フランス産の仔牛の骨付きロースを、ハーブの油をかけながら、低温でシンプルに焼き上げたもの。付け合せは、リ・ド・ヴォとトリュフのショソン形のサクサクのパイ。ポロねぎのピュレとジュを添えアスペルジュ・ソバージュと共に。
simplement et doucement rôti aux fines herbes,
accompagné de ris de veau en croûte dorée aux truffes
シンプルにゆっくりとハーヴと一緒にローストした乳のみ仔牛肉 
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⑥Sélection de fromages affinés de France
熟成したコンテとヴォーフォールチーズをたっぷり振って香ばしく焼き上げたドライフルーツのアリュメットパイ、フルムダンベールのピュレをアンディーヴの上に絞り込んだ盛り合わせ。
フランス産熟成フロマージュ 
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⑦Crémeux chocolat grand cru "MANJARI" glacé à la cerise
デザートは、マダカスカル産のグラン・クリュ(最高級)のチョコレート「マンジャリ」を使ったクレムーと、甘酸っぱいチェリー風味の冷たいグラッセをコラボした。コース料理の最後を纏めるに相応しいアシエット・ド・デセール。
チェリー風味の冷たいグラッセととろける様にクリーミーなチョコレート・グラン・クリュ"マンジャリ"とのハーモニー 
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⑧Thé (infusion) ou Café et mignardises
ホテルメードのパンと可愛らしいプティフール。
コーヒーまたはティーと小菓子
キッチンからの解説
晩餐会の進行に合わせリアルタイムで映し出される福田総料理長による料理説明では、実際に調理をしながら晩餐会会場の水野理事からの質問に答え、分かりやすく素材や工夫についてお話しされました。
- ②「昔ながらの技法で丹念に仕上げた野生の猪パテ・ド・カンパーニュにフォワグラのムースでモンブラン仕立て、甘酸っぱく凝縮した旨みとなめらかな木苺のピューレと共に」について
- 水野理事
パテ・ド・カンパーニュというクラシックなものを選ばれたのはどうしてでしょうか? - 福田総料理長
ビストロが好きでよく利用するのですが、行きつけのビストロのパテ・ド・カンパーニュがおいしいので皆様にもご紹介したいと思いました。 下に敷いたシュトレンはブランデーにゆっくり漬け込み、程よく熟成したものを薄く切って軽く炙りました。砂糖はほとんど入れず、フルーツの糖分で召し上がっていただきます。 パテは切った時にソースがおいしそうにあふれ出るよう工夫しました。
- ③「魚介類のコンソメジュレ フルーティーなフヌイユのクレーム」について
- 福田総料理長
こちらはリンゴとフヌイユをゆっくりと煮込んであります。そして、本日はこんな魚介類を用意してみました。子持ち昆布と雲丹、鮑、平目、真子鰈と金目鯛、これらを昆布を使用し和食のテクニックで〆ています。 リンゴとフヌイユの上にオマールの頭を使ってゼリーを作りたっぷりとかけます。そして先程の魚介類をのせていきます。あとはえだ豆とひよこ豆、白いんげん豆などをあしらいます。これからこちらの料理をサーヴィスいたします。 - 水野理事
今の説明で、メニューにあった「フルーティーなフヌイユ」という意味が解明できました。リンゴとフヌイユなのですね。この取り合わせを楽しみにいただきたいと思います。
- ④「鱸のブーランジェール リヨネーズポテト ポロネーズパセリ 網笠茸」について
- 福田総料理長
ポテトは「インカの目覚め」を使用してリヨン風に。今回は乾燥のモリーユを使用しています。ポートワインを含ませ、金柑はこの日のためにゆっくりと漬けておいたものです。 鱸はパセリバター、パン粉、胡桃などを加えて仕上げます。ソースポロネーズをたっぷりとかけ、パセリのみじん切り、少量のブイヨンを加えクレープを被せてこのままゆっくりと火を通します。 - 水野理事
ブーランジェールというと玉ねぎとジャガイモをグラタン皿に入れて、パン屋さんがパンを焼いた後の窯で焼いくという感じですが、今日は非常にヘルシーかつジューシーで斬新でした。 - 福田総料理長
ディシプルに似せた紐を捜すのに苦労しました。金のバッヂをつけて仕上げますが、ディシプル章を受けられた新会員のお祝いと思って工夫してみました。 - 水野理事
よくお考えいただいてありがとうございます。次の肉料理を楽しみに待っております。
- ⑤「シンプルにゆっくりとハーヴと一緒にローストした乳のみ仔牛肉」について
- 福田総料理長
次はフランス産の乳のみ仔牛です。ハーヴと一緒に焼いて仕上げていきます。今日はショソンをご用意しました。トリュフのみじん切りをパイ生地に混ぜて作ったものです。中にはリ・ド・ヴォとトリュフが入ります。肉の使用部位はロースです。ポロねぎのピュレをソースと一緒に付けさせていただきます。 - 水野理事
メニューには「シンプルにゆっくりと」とありますが焼く温度はどのくらいですか? - 福田総料理長
低温でゆっくりと火を通しました。ハーブで香り付けしたオイルをかけながら表面を狐色に焼き上げます。中は低温でピンク色に仕上げますが周りは非常に香ばしくなると思います。 - 水野理事
具体的に何℃か教えていただけますか? - 福田総料理長
58℃です。それではこれから仔牛肉に取り掛かります。その後は3種のフロマージュ、デザートへ一気に進めさせていただきます。
















